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BL思考なので、ご注意ください。 あと、誤字脱字はよくします(´・ω・`)
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「泣けない絵描き」のお話。





ある町に

いつも泣いている人の絵を描く、男がいました。

その絵を見た者は絵と同じ様に泣いてしまうと言う。

男は絵のようには泣けなかった。

愛用していたマグカップを割っても
最愛の妻が死んだでも
飼っていた犬が死んだって
男は泣くことができなかった。



それを見た人は
「なんて冷たい人」と言った。

男は大切なモノを失っても泣けない。

でも、男は悲しんでいた。
誰もその事には気が付かない。

自分はどこか壊れているのではないのか?

男は悩んだ。
考えても答えは出ない。
そして、男は白い紙に人を描き、涙を描いた。

自分の欠けているモノを補うように
自分に無いモノを求めるように
男はひたすらに描いた。


そのうちに男の絵を「素晴らしい」「涙が止まらない」と言われ
男の絵は評判になり、買われていった。

男は思った。
「涙がでるから素晴らしいなんて、理解できない」と
男は苛立ちを覚えた。
自分の絵で泣いている者を羨んだ。


男は自分の身体をキズつけてみた
「痛くて泣けるかかもしれない」と思ったから
でも結果は痛いだけで、意味はなかった。


どうして私は涙を流せない?


心はこんなにも嘆いているのに。
この目はどうして涙ひとつも流してくれないのだろう。

男は涙の代わりに絵を描いた。



ある日、男が広場で絵を描いていた。
「おじさん、悲しいの?」と
少女が訪ねてきた。

そんなことはじめて聞かれたので
男は、「なぜそう思うんだい?」と聞き返した。
「だって、この絵の人泣いているよ?」
少女は絵を指して言った。

「でもおじさんは、悲しい顔してないね」
「私は、泣けないんだよ」
少女は驚いて目を大きくしていた。

そんなに驚く事なのか?少し男はイラついた

「泣けないの?」と少女は言った。
「あぁ」と小さく答えた。

少女は少し考えから男に言いました。
「おじさん、泣くってどういうことか知ってる?」
「ずいぶん難しい事を聞くんだね?、私は泣けないからわからないよ」
男は変な子に絡まれたと、ため息をついた。

「じゃあ、アタシが教えてあげるね」
少女は男の右手を両手で握り、話し始めた。

「あのね、人が泣く時って、辛いことや悲しいことがあったら目から涙がでるの」
男は面倒だと思いつつも少女の言葉に耳を傾けた。

「その涙はね、辛いことと悲しいことを身体の外へ出してくれるの
だから心が軽くなって、また笑えるのよ」

(笑う…)
男はいつから笑っていないのか、少し考えても思い出ぜずにいた。

少女は続けて
「でもね、泣いてしまうと大切な思い出も
一緒に出ていってしまうんだって、どんなに忘れたくないことでも…。
忘れてしまうの、だから生きていけるの。
寂しいことでも次の幸せを心に入れるためにね」
少女はハニカミながら笑った。

そして悲しそうに言葉を紡ぎました。
「おじさんは辛くても悲しくても、それでも忘れたくなかったんじゃないの?」
「忘れたく…ない?」
「そうよ、大切な思い出だもの。誰だって失くしたくない。」
「大切な、思い出…」

男は少女の言葉を繰り返していました。


「もしも、泣きたいのなら。その思い出を捨てられる?」

その言葉に男は突然立ち上がった。

「捨てる、なんてそんなこと‥‥そんなっ」
男は顔をくしゃくしゃにして、今にも泣きそうに言いました。

「私が涙を流す代わりに、思い出をっ…
捨てるなんて、できるわけがない」

少女の手が、まだ男の右手を離さない。

「おじさんっ、生きてるのに、こんなつめたい手をして死んでいるみたい」
「私はっ‥‥もう、死んでいるんだよ」
少女に言われ、いつから自分は死んでしまったのだろうと思った。

「ダメだよ、死なないで」
少女はギュっと痛いぐらいに男の手を握った。
「手を離してくれないか」
「ダメ!離さないっ、やっと会えたんだもの」
「私に会いに来たのか?、会えたんだもういいだろ?」
男は少女の手を振り払おうとした。

「アタシはっあなたにお礼を言いに来たの!!」

「?…感謝されることなんか、何も…っ!」
お礼なんて言葉は、男には不思議に思えました。

少女は目に涙をためて言いました。

「アタシのお姉ちゃん、感情がなくなる病気だったの
どんな偉いお医者さんでも治らないって言ったのに
でもおじさんの絵を見たら、突然泣きだして‥‥そしたら段々
感情が戻ってきたの。お姉ちゃんが…戻って、きたの。」
少女は涙を流した、嬉しいことのはずなのに。

「おじさんの絵は、おじさんの悲しみがいっぱい…詰まっていて
見た人はその悲しみが耐えられなくて、泣くのかな?って」
絞り出す声で少女は言いました。

「もしかしたら、おじさんは苦しんでいるのかもしれないって、アタシ思ったの
おじさんはお姉ちゃんを救ってくれたのに、おじさんは救われないなんて…
そんなのおかしいから」
少女は男のために泣いていました。

男は久しぶりに人が泣く姿をまのあたりにしました。
しかも、自分のために泣いているなんて
信じられないことだったのです。

でも男はどうすればいいのか分からずに、少女の幼い手を握り返すのでした。

その手は温かくて、温かくて。
自分の身体も温かくなって、心から何かが溢れだしていた。

「人はこんなにも、温かいのか」
男は、人の温かさも忘れていました。

妻の手もこんなにも温かかったのに。
忘れることなどできなかったのに。

少女の泣き声が止んだので少女を見ると
「おじさん、泣いてるの?」

その言葉で自分が泣いていることに気がついた。

「あぁ、私は泣ける‥‥んだね」

男の何十年分の悲しみが流れていった。
大切にしていた思い出も一緒に…。


目をパンパンに腫れさせて、あまりにもお互いが
ブサイクな顔なので、二人は笑っていました。

「ありがとう、君のおかげで私は、泣けるようになった
全ての思い出を忘れないなんて、無理があったんだ
だから、今は楽しい思い出だけを心に残そうと思う」

男は泣いている絵を破り捨て
新たに紙を取り出し、人を描きました。

それは誰もが笑顔になる、笑った人の絵でした

「もう、人が泣くような絵は止めにするよ」
男はすっきりとした顔で言いました。

「アタシもそれがいいと思うわ」
少女も納得しています。



「おじさん、改めて言うね」
「ん?」


「絵を描いてくれて、ありがとう」



少女は男に笑顔でお礼を言ったのでした。


 

 

 

 

 

 

 


END

 

 

 

 

 


---------------------------------------------------



男は愛したモノ全てを忘れたくなかった。

それが辛くても、悲しいことでも全部、手放したくはなかったのです。
大切な思い出と引き換えに、味や匂い、感覚、そして温かさは失われ
そのたびに男の心は冷たくなっていきました。

失うことを恐れるあまりに、男の心はいつも悲鳴を上げていました。
泣くという行為のかわりに、男は絵を描いたのです。

だだひたすらに、泣く人の絵を描いたのです。



その一枚を少女は手に入れました。
絵を見た者は涙が出てしまうと有名だったからです。
姉の感情が戻るのかもしれないと、希望を胸に。
それは見事に成功して、少女は男に感謝していました。

いつ見ても男の絵は悲しく、少女は思ったのです。
「彼は泣きたいのかもしれない」と
幸せにしてくれた男は今も悲しみに沈んでいるのでは?

そして、少女は男に会いに行くのでした。





 

---------------あとがき------------------

昨日ボーっとしていたら思いついたので
絵本のように書いてみました。
おっさんと少女の組み合わせが好きなのでこうなる…。
恋愛な話にしたい訳ではないのもありますが

※この話は全てファンタジーです。細かい設定に突っ込み禁止(笑)

そんなことはされないとわかりつつも、照れ隠しです。

「泣かない」という行為は死んだこと失ったものを
認めない、受け入れないという話を読んだことはあるのですが

あえて、認め、受け入れた上で「忘れたくない」という
そのために男は「泣かない」ことを選んだ。
男の中では「忘れたくない」=「泣かない」で成立していません。
なので、「泣けないのは何故?」となっています。

このお話は読み手の自由に解釈してもOKです。
かなり説明した気がしますが、感じたままに受け取っていただいて構いません。

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